
派遣薬剤師として働いていた頃の話です。
これまで色々な派遣先を経験してきましたが、今でも忘れられない沢山薬局があります。
今回はその数多のクセツヨ薬局の中の一つ。契約は珍しい短期の一か月契約でした。
正直に言います。初日の朝、白衣を着る前に帰りたくなりました。
謎の塩対応
その薬局は山の中腹にあるような場所でした。
初日ということもあり、少し緊張しながら15分前を目指して出勤。
「おはようございまーす!派遣で参りました流氷飴と申します!」
元気よく挨拶したのですが、調剤室内から返ってきたのは微妙な反応。
チラッとこちらを見るだけの人。
聞こえるか聞こえないかくらいの小さな声で挨拶を返す人。
そして漂う謎の空気。
私は心の中で思いました。
「私、何かしましたか?」
「もしかして薬局間違えた?」
「派遣が来るって聞いてない?」
もちろん真相は分かりません。
でも初日の私は本気でそう思っていました。
「もはや地雷臭しかしないわ…早速帰りたいんですけど…」
管理薬剤師も塩対応
しばらくして管理薬剤師が出勤。
「おはようございます!流氷飴です!今日から一か月、宜しくお願い致します!」
と元気に挨拶。
責任者の登場で、ようやく説明してもらえると思ったのですが、
「あ、はい」
と目も合わさず。そして去る。以上。
終了です。
いやいや待ってください。
私は何をすればいいんですか?
調剤?
監査?
投薬?
薬歴はどのソフト?
レジシステムは?
ビニール袋は有料?無料?
有料なら3円?5円?
っていうか、そもそもの店舗ルールは?
疑義照会は?
この人たち、口利けないの?
頭の中はクエスチョンマークだらけでした。
完全にアウェーな環境w
そこで私は、近くにいた女性薬剤師さんに超低姿勢で話しかけました。
「私、投薬で大丈夫ですかね?あ、今日から一ヶ月お世話になる流氷飴と申します」
今思えば必死だったと思います。
生き残るために。
幸いにもその女性薬剤師さんに、投薬に徹するように教えて頂けました。
その薬局の内規がまとまっている冊子を貸して頂き、必死に頭に叩き込みます。
全員が全員、塩対応というワケではないのです。薬剤師や事務同士も普通に喋っていました。
ただ、新参者には塩対応のようです。一定数あるのです。そういう現場。そういう人間の集まりw
きっと向こうからしても、得体の知れない派遣薬剤師が期間限定で働くって、最初から信用なんかできないのも無理はないでしょう。それも承知はしています。
ただ…挨拶ですら塩対応って…社会人としてヤバ過ぎ…と思いましたね。
クレームを入れても無駄(わかってはいたけれど)
あまりにも辛かったので、初日に担当エージェントへ連絡もしました。
この派遣先を紹介してくれた私のエージェントです。
勤務終了後、電話をして事情を話しました。
「正直、明日から行きたくありません」
すると返ってきた言葉は、
「頑張ってもらうしかないですね」
でした。
いや、そりゃそうなんですけどね。
「知ってたでしょ、この職場のクセの強さ」
と心の中で思いました。
もはや切り替えるしかない!
幸いにも、その薬局はそこそこ忙しい店舗でした。
そして私はある決意をします。
「投薬の鬼になろう」
そう。暇になるから辛いのです。
この空気の中で手持ち無沙汰になるくらいなら、仕事をしていた方が良い。
監査済みのカゴが来たら誰よりも早く取りに行く。
患者さんが来たら投薬する。
ひたすら投薬する。
来る日も来る日も投薬する。
投薬!薬歴入力!投薬!薬歴入力!
この繰り返しでひたすら8時間が過ぎるのを耐えるのですw
投薬マシーン爆誕
当時はまだ新型コロナウイルスへの警戒が強かった時期でした。
ラゲブリオやゾコーバが処方された患者さんや、感染が疑われる患者さんには、隔離室で防護服を着て服薬指導を行う運用でした。
もちろん私が行きました。
むしろ、
「この空間で暇になるくらいなら私が行きます」
くらいの勢いでした。
今思えば完全に脳筋ですw
昼休みは死守!
昼休みも独特でした。
薬局は山の中腹。近くにコンビニもなく、外へ出るにも坂道を登らなければなりません。
幸い私は車通勤でした。昼になると車へ避難。休憩室は遠慮して、静かな空間でひとり昼食を食べること、それが毎日のルーティンでした。
ようやく乗り切った一か月
そんなこんなで一か月。
気付けば私は完全に投薬マシーンになっていました。
そして驚いたことに、最初はあれほど距離のあったスタッフの皆さんも、投薬マシーンの私を少しずつ信頼してくれていたようです。
そして契約終了が近づいた頃。管理薬剤師からまさかの契約延長のお誘い。
「もしよければ延長しませんか?」
とのこと。
正直、びっくりしました。
初日は白衣を脱いで帰ろうかと思っていたのですから。
もちろん私は丁重にお断りしました。
延長はいたしませんw←某医療ドラマ風に。
案外何とかなるもの!
今振り返ると笑い話です。
でもあの日の私は、一か月どころか一日も持たないと思っていました。
もし今、派遣薬剤師として初日を迎える方がいるなら伝えたいことがあります。
初日は地獄でも、案外何とかなります!
仕事の鬼、投薬の鬼になることで乗り切るしかありません。
内規を読んでもわからない点は、あやふやにしておくとミスした際に余計に居心地悪くなりますし、最終的に患者さんにご迷惑をおかけすることになります。
仕事に真摯に取り組むことは当然のことですが、辛いと感じる職場こそ仕事の鬼になることをオススメ致します。